50代からの出会うと別れ

結婚31年。子どもはいません。これからの人生は「別れ」が多くなると思います。そしてほうっておくと「出会い」は減っていくと思います。だから私はいろんなことに出会いに行きます。やりたいことはどんどんやります。実は50歳になってから毎日がとても楽しくなってきたんです。そんな毎日をしっかり書き留めていきます。目標は私が私に別れる時がやってくるまで。

3月 父は83歳になった。

父はこの10年間でいろんなことができなくなっていった。

 

10年前は車の運転ができた。

2009年の12月、初めて入院した母の病院に父の運転する車で行き、父と一緒に先生の話を聞いた。

帰り道、父の子供の頃のころの話を聞きながら帰った。

 

目の病気を発症し、車の運転をやめた。ゴルフもやめた。

 

父はとても達筆で、美しい字を書く。書道をたしなんだわけでもなく。

父の書く字は美しい。

我が家では文字を書くのは父の役目だった。2014年の12月一緒に旅行に行ったとき、父に書いてもらおうとすると、文字がガタガタ揺れていた。よく見えないから書けないと父は途中でペンを置いた。

 

2017年の3月、一緒にお墓まりに行き、帰りにうちに寄った。久しぶりに。これがうちに来た最後だと思う。

 

年賀状をだすのをやめた。

ジムへ通うのをやめた。

自転車をやめた。

 

2017年の秋ごろ、お昼前に公園に散歩に行って、帰ってこなかった。

迷子になった。

弟と母が探し回ってくれた。

見つからないので警察に捜索届をだした。

夜10時過ぎ、警察から連絡があった。

みつかった。

迎えにいった弟に父は「どうもすみません。ありがとうございます。」と他人行儀に言ったらしい。

息子だと一瞬わからなかったようだ。

 

幻視、幻妄がしばしばおこるようになった。

小さな子どもが遊びに来てるねとか言った。

東京に出張に行かなけばならないと言い張って、駅まで行ったりした。

夜中にカラの湯舟に入ってでてこれなくなったりした。

 

2018年の春、老人ホームに入った。

最初のころは、「もう帰る」と、歩いて家に帰ってきた。

このころは、家までの道がわかった。歩くこともできた。

今は、家までの道もわからない。

時々家に連れて帰ってくるけれど、よくわかっていないようだ。

 

私のことはまだわかる。

覚えてくれている。

自分で歩けるし、自分で洋服も着ることができる。

 

こうやってあらためて振り返ってみると、哀しい。

 

3月は、新型コロナウィルスを警戒して、父にも母にも一度も会いにいかなかった。

 

次会うときまで覚えていてくれますように。